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適応障害が多く発生している原因とは ~インターネットと不寛容社会~

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適応障害とはなにか

パタッ,と会社に来なくなって,「あの人どうしたんだろう」と思ったら「適応障害」という診断がくだった,などという話をよく聞くようになった。

適応障害というのは「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」(ICD-10:世界保健機構の診断ガイドライン)と定義されている。

なぜ適応障害はふえてきたのか

昔は「ノイローゼ」,「神経症」などと呼ばれたいたこれらの精神疾患に診断名が付くようになってきたのは研究が進んだ最近のことだ。いまや100万人以上の人がこの診断名を付けられているという。

では,なぜ今こうした適応障害が多く発生してきたのだろうか。 研究の進展によって「新しく診断ができるようになった」というせいもある。これまでも診断がされなかっただけで発症者はたくさんいたのだろうと思われる。

現代が,「ストレスが多い社会だから」発生するんだというのはたしかであるが,こうしたストレスというのは昔からあるし,これからも逃れることはできないわけで,現代社会特有の病気としてとらえるのはいささか難があるように思われる。

昔は,「あいつおかしくなっちまった」だの「根性がない」,「弱い奴」として打ち捨てられていたこれらストレスによる重大な健康上の支障に対し,ようやく社会的・保健的に対応する必要を認めだしたが故の現象と言えるのではないだろうか。

インターネット社会と適応障害の関係

ただ一つ気になることがある。

適応障害などのストレス障害について研究が進展しだしたのが2000年以降になってからで,これはインターネットの急速な進展の時期とリンクしているということだ。

同時に,キーワードの検索数を調べるサイトによると,「いじめ」・「貧困」・「生活苦」・「仕事 やめたい」というキーワードの検索数と「適応障害」の数の増加傾向が同じ経過をたどっているのも気になった。

いずれも2010年ごろから右肩上がりに増加している。

個人的な適応障害は,「職場のメンタルヘルス」とかいう職場の人事部レベルで対処するにしても,実は大きな社会的問題がかくれているのではないか・・・。

インターネットの中で暮らす我々は,自分の願望に沿った情報だけを検索する傾向がある。

自分の願いが実現されている情報、自分がすでに知っていて,自分の信念と同じする情報を選ぶ。その一方で,そうあってほしくない情報や自分にとって都合の悪い情報は受け入れない。

「確証バイアス」と呼ばれるこういう傾向は,繰り返されていくと、最後は頭の中で、歪んだ情報が真実となり、異なった価値観に対しては徹底して不寛容になってしまうのだ。

不寛容社会と適応障害

こうした,「異種に対する不寛容さ」というのが次第にひずみになって出てきているように思う。

それは,これまで行われてきた画一的な学校教育,「ほかの人と同じようなことを考え,同じような服を着て,同じような髪形をし,外れたことをしてはならない」という教えを受けてきた世代にとって余計にセンシティブに感じられる事象だろう。

「個性を生かす」のが人事マネジメントの「キモ」だが個性を生かすようにした途端に周囲から異質な存在として排除されていきやすくはないだろうか。

適応障害の増加がこれからの社会に警鐘を・・・

人口が減少していく局面で,税収の伸びにも限界がある昨今,もう国や自治体には期待ができず,政府は高齢者の面倒をみる地域で仕組みとして「地域包括ケアシステム」を提唱した。そして間髪を入れず,その上位概念で障害者をはじめとする社会的弱者も地域でケアしようという「地域共生社会」を提唱し,医療・福祉関係者をはじめ,教育関係者も次第に連携をとりつつある。

これからは,町内会などの地域コミュニティも重要性を増していくだろう。

「誰一人として取り残さない。すべての人が安心して最後まで住み慣れた場所で暮らせる」

これを目標とするこれらの仕組みに対し,

「自分と違う考えの人を排除する」

という傾向はなじまない。 違う考え方や習慣を持つ人と助け合って暮らしていくにはどうしたらよいのか。 適応障害の人が増加していく現象はこうした問いかけを少しづつ投げかけているのではないだろうか。

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