■ とうとう2019年も最後の月になった。
12月だ。 もうすぐ2020年。東京オリンピックがやってくる。全国をあげて外国人観光客の受け入れ態勢が整えられはじめているし、再開発が盛んになってきている。
なんやかんやで忙しい。 ところで、このブログは働き方改革の話題を取り上げることが多いが、12月というと忘れてはならない事件が一つある。
12月25日、クリスマスの日に社員寮から飛び降り自殺した、「電通」社員高橋まつりさんのことだ。 高橋まつりさんが死に至る経緯は他のサイトや報道に詳しいが、それを見ると相当にひどい状況であったことがわかる。
■ 高橋まつりさんのことをわすれない
53時間連続勤務の後6分休憩して、その後9時間連続勤務するなどのおおよそ考えられない過剰な働き方。それに加えて、仕事の結果の全否定、パワハラの連続。恐ろしい変な社訓。
高橋まつりさんは、東大卒で美人。それに加えてお母さんが頑張って声を上げたからこそ、日本国中が注目する過労死問題の中心事例になりえた。
しかし、そうではない普通の皆さんの表に出てこない過労死、労災の認定請求すらしていない事件や、泣き寝入りしている例はもっとたくさんあるはずだ。死には至らないが、死にたくなるほど苦しみ続けている皆さんもいるだろう。
■ なぜ、我々は働き過ぎるのか
組織で雇われて働く者の働き方改革とはいったい何なのだろうか。
人が人を評価する仕組みの中で命令に従うしかない者たちは、自分の考えはわきに置いて、黒を白と言い換え、「残業しろ」などと言われないまでも自主的に働き過ぎを実行する。
なぜか。
そうしたほうが不安がないからだ。会社での評価を気にしない人は1日でも早く結果を欲しがる経営陣を無視して、早く帰ったり有給休暇を取ればよろしい。
サラリーマンとしての生き方しか知らないほとんどの人にとって、他人に人事権を握られるということは、生活、ひいては幸福になる権利や生命・財産そのものの左右を握られる、すなわち「人としての運命をにぎられる」ということと同じことだ。
いっぱい社員がいる中で自分も会社に気に入られなくなるのではないかと不安でしょうがない。だから頑張りすぎてしまう。
日本の頂点に君臨するような超有名企業に運よく就職できていればこそ、その傾向は高いに違いない。なぜなら、下手すれば、日本で最高レベルの厚遇から滑り落ちるしか道はないからだ。
■ 厚生労働省の政策は小手先で意味なし
現在は働き方改革真っ盛り。「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が2つの大きなポイントとして掲げられている。 こうした法制の強化改正だけで労働時間が減るのならば話は簡単だ。
本当の目的は先進7カ国中最低の労働生産性を上げること。タイムカード上の残業時間が減少し、有給休暇が増えれば増えるほど、実労働時間1時間当たりの総利益は増加する。当たり前の話だ。
そんな数字遊びには働き方改革の意味はない。
ところが実際はこうした「運命を握られる労働者」としての「しがらみ」があるから過労は全然減っていかない。過労が原因と思われる労災の認定状況の推移(平成26年~平成30年:厚生労働省)をみると認定の請求件数は右肩上がりになってきており、実際の認定件数も全く減っていないのだ。
■ 本当に、労働者の健康を守り、日本の生産性を上げるには
労働者自身が、生活と健康を守るために労働時間を自主的に決められ、職場もそれを支援する。
疲れたら休むのもOKとし、働きすぎる人を「あいつは頑張っているから」などと過剰に評価しない仕組みも必要だ。
それに、子育て家庭は休まざるを得ないことも予期せずに発生する。こうしたことに柔軟に対応できる体制も職場には必要だ。
こうしたことに対応しているのが有給休暇制度だが,好きな時にいつでもとれる会社は少ない。
日本の将来を担う子どもの教育は親と学校を中心とした地域の連携が必要と思うが、これまではその親が勤めている「職場」の兼ね合いがほとんど度外視されてきた。
地域と学校の連携はあっても、親の職場と学校の連携など全くないに等しい。
生活のすべて、人生のすべてを「職場」に依存しないと生きていけないこの現状を改善しなければ、過労による健康障害もなくならないし、生産性も上がらないと思う。
こうしたこともあってか、働き方改革の中では「副業・兼業の促進」もあるが、多くの会社の就業規則では副業・兼業を禁止しておりあまり功を奏していないようだ。
一部上場企業の事務職・企画職しか関係ないようなプレミアムフライデーなんかよりこうした自由な会社の人事権に縛られな生き方を促進するべきではないのか。
■ 日本人の働き方が「生活習慣病」
「働き方改革」。そろそろ掛け声もかすれてきた。
就職してしまうと自分の運命を自分で決められなくなる日本人の働き方そのものが「生活習慣病」にかかっているような気がしてならない。
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