■ のんびり議論している場合ではないほどのひっ迫具合
このブログ(消費税増税は嫌に決まっている)でも以前書いたが、国の財政改革で最も必要とされているのが増え続ける社会保障費の削減だ。
社会保障費という名目の税金からの歳出は全体の三分の一強にもおよぶ。
だがそれだけでは必要な額の約半分にもならないから、残りは皆さんが毎月支払っている決して安いとは言えない国民健康保険料、国民年金保険料、一般企業が支払う社会保険料から賄われる。
その社会支出総額は全部で119兆円。(平成15年政府統計 国立社会保障・人口問題研究所 平成29年8月1日発表)ちなみに国が集めた税金からの歳出全体の額は97兆円だからそれをはるかに上回っている。しかもそれがまだまだこれから増えるというから、この問題ががどれだけ深刻かわかる。皆さんもこんなブログ(笑)で問題を知るようでは国が亡びるかもしれん。
スズメの涙程度でもいいからとにかく削減していかないと、この先どうなるかわからない。年金などでも改革は行われていると思うが、今回は医療介護費削減によっておこる影響について考えてみた。
■ 2018年は診療報酬大改革の年
病気やけがをして病院で治療や入院をすると本人の負担分以外の部分約7割くらいは医療保険から支払われる。その病院に支払われる額には、診察・処置・検査・投薬・ベッド料等点数で評価する細かい決まりがあるのだが、その決まりをたびたび変えることによってこれまで医療費の支出は少しづつ抑えられてきた。 次の改定は来年(2018年)医療と介護の報酬ダブル改定が行われる予定だ。
近年、病院がなんだか進化してきたように感じている人はいないだろうか?。ふた昔前くらいは病院といえばお役所的ななんだか暗いイメージしかなかったが、いまは待合室も明るくて待ち時間が長いとアメを配ったり、飲み物が飲めたりなんかしてなんか快適になってきた。患者は「患者さま」となりホームページなんか見ても「癒しの場所」という感じで行きたくないはずの病院に行きたくなってしまうほど。
その裏には、たびたびおこなわれる診療報酬改定があるとみた。
つまりこの報酬改定という政策、病院や介護の事業所に効率化と自主努力を促すようにやってきた感がある。保険診療の査定審査も厳しくなった。飲まなくてもいいような薬を大量に処方したり、病院に長々と入院させておいて儲けようという形式は通用しないようになって久しい。
最近では特に入院に関して、病床ごとにその機能を細かく分類して報酬額を決めている。例えば交通事故などでけがをして入院しても高度な治療をして18日以内に退院できる設備と人員を備えた病院は報酬が高い、なかなか治らない疾患を持っている人でも自宅で生活できるようになるまでリハビリ等の訓練を行う設備と人員を備えた病院は実績が標準以上なら高い診療がもらえる、といった風である。
つまり、「重傷病患者をできるだけ早く元気にして退院させる」能力を評価するようになってきたわけで、そうなると病院も商売なので次から次に入院させては退院させるという効率の良さが求められる。医療行為は少なくて済むが、どうしても体が不自由で病院の都合上退院させざるを得ない人には老人が多いから介護施設を併設するわけだ。
2025年には団塊の世代が75歳を迎える。地域包括ケアシステム構想とはお年寄りにやさしそうに思えて聞こえがいいが、国はこの構築によって病院の病床数が過剰になると考えており、医療費削減政策の目玉としてベッド数を大幅に削減する狙いがあるのは見え見えだ。
■ 医療業界・特に病院の自主努力に荷重がかかる
だから病院側としてはできるだけ評判を上げておかないといけない。いろいろな格付け機関を利用したり、公的機関の認証を積極的に取ったり、社会的認知度と評価を上げるのに余念がないのが実情だ。
しかしこうした活動をしていく余裕のない規模の小さい病院、クリニックもたくさんあり、外来等でよほどの人気がなければ今後ほかの病院に吸収されるか廃業していくしかないと思われる。医療業界ではこれは十分予想されており、これから全体に減らされる病床数の中、逆に増やしたい大きな病院もありおそらく水面下では病院間のM&A綱引き合戦が行われていると思われる。
ちょうど高度成長期にたくさんできた病院の建物や設備が古くなって、病院も建て替えの時期が来ているのと相まって、まさに「医療ビッグバン」とでもいうべき環境激変がおこっているのだ。
■ 医療費削減で割を食うのは健康管理を怠った人?
調べていて、これからもっとこの傾向が進めば、病気をしても中途半端な治療で退院させられてしまうことになりかねない。
とにかく健康には気を付けなければ。医療費削減で割を食うのは結局自主的健康管理を怠った人になるのかもしれない。
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