■ 自民党幹部の差別発言
自民党の竹下亘総務会長が、「同性パートナーが、天皇、皇后両陛下主催の宮中晩餐会に出席するのは反対」という意見を述べたところ、各方面から反発が相次ぎ、反省を表明したニュースがあった。前駐日デンマーク大使は同性婚をしていたため、異性の配偶者を同伴して出席するような行事に参加がかなわなかったという。(ちなみにデンマークでは1989年同性パートナーシップ法が成立して2012年には同性結婚法というのができて同性同士の結婚が認められている。)
古参の自民党議員の発言としては「さもありなん」である。天皇陛下が主宰される宮中晩さん会の権威を守ることを考慮した際に出る発想としては自然であろう。しかしながら世界のLGBTに対する認識が変わりつつあることに対する認識が不足していたと言わざるを得ない。日本の文化云々という議論もあるが、一夫多妻制の国の大使が夫人を複数連れてくることはOKだというから、なんかおかしい。
■ そもそも一般日本人の意識としてどうだろう
LGBTに関するアンケート調査は2015年ごろからLGBTの人権擁護団体や最近では「連合」が行ったものがあるが、約半数はその存在を「認めて受け入れる」といってはいるものの自分の職場にLGBTがいたり、隣の人がLGBTだったりすることに対しては「いやだ」という意識があることがはっきりしている。特に自分の子供がLGBTだったら絶対に嫌だと思っている人が多い。
■ 日本の人権教育の現状
ところで、日本は「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年12月6日法律第147号)」というのがあって各都道府県では年間計画を立てて人権啓発活動を行っている。とある県の人権教育・啓発基本計画実施状況をまとめた資料によると、県でパンフレット等を作成、講演会やイベントを行うなどし、啓発活動を行っている「被差別カテゴリー」は次の通りであった。
1.女性
2.子ども
3.高齢者
4.障害者
5.同和問題
6.外国人
7.HIV患者、ハンセン病患者
8.犯罪被害者等
9.インタネット等による人権侵害
10.北朝鮮当局による拉致問題等
ご覧の通り、LGBTに関してはまだない。おそらく日本全国同じようなカリキュラムであろう。筆者も立場上実はこうした自治体の行う講演会に何度となく参加したことがあるが、こうした教育を行うための専門の先生もおられて(特に同和問題)決まった枠組みの中でいろいろ工夫されていた。
その講演会の中で感心したエピソードを聞かされたことが印象に残っている。講師の先生が実体験として話された内容である。
■ 人は基本的に差別したがる存在
その先生は隣に奥さんを乗せて車を運転していた。先生の車は普通車なのだが、安全運転をしていた遅めのスピードの先生の車を、後ろから追ってきた軽自動車が、スーッと追い越していった。そのとき先生は、おもわずこう口にした。
「軽のくせに!・・・」
すると隣に乗っていた奥様が、「あなたは人権教育の先生なのにそんなことをいったらだめでしょ」と注意され、「はっ」としたのだという。
その先生から教わったことは「人は本来差別をしたがる存在」だということと「だからこそこうやって何回も同じことを言い続ける」必要があるのだということであった。
マイノリティの人権を守る活動に終わりはない。すっと言い続ける必要、意識し続ける必要がある。差別は自然になくならないのだ。ということを学んだ。
■ 意識し続け、声を上げ続けないと差別はなくならない
教育委員会というのは行政の中でも最も保守的な機関の一つだから、この人権教育カリキュラムにLGBTがのっかるのは相当先の話になるだろう。
でも、声を上げ続けるのは大事だ。多種多様いろんな人間が「共に生きる」ことが新しい価値を生み出していく。
LGBTに関しては自民党の総務会長がそういうことを言っているような状況だから政府や行政はなかなか変わらないことが予想される。
意識し続け、声を上げ続けよう。
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