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働き方改革の行く末は?~我々の仕事スタイルの未来を考える~

投稿日:2017年11月19日 更新日:

■働き方改革って何だろう

「働き方改革」という言葉が定着してきた。職場でよく口にされるようになってきたと
お感じの方が多いのではと思う。今年の3月末ごろ実行計画が決定されたのが背景にある。ひょっとすると今年の流行語大賞にもなるんじゃないか。

しかし、この言葉の意味するところについて明確に理解をしている人がどれくらいいるのだろうかというと首をかしげざるを得ない。一般のサラリーマンに聞いてみれば、

「残業するなということじゃないの?」
「有給休暇を消化しろとか?」
「プレミアムフライデーみたいなのするのかしら・・」

間違いではないかもしれないけどその程度の問題意識しかないのではないか。

そもそもの言い出しっぺは誰か、今何かなされているのか、どういう経緯でこうなったのか、そしてこれからどうなっていくのかちゃんと調べてみよう。

■「働き方改革」の経緯

まずは、「働き方改革」の経緯をまとめてみた。

まず、デフレ脱却の経済政策の必要性があった。アベノミクス・三本の矢政策である。第1の矢は金融緩和、第2の矢は財政支出、そして働き方改革は続く第3の矢に関係している。
第3の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」ということなのであるが、政府は「第1と第2の矢はすでに放たれた。現在第3の矢に取り組んでいるところで効果が表れつつある」としている。
ところで第三の矢の実現のためには「一億総活躍社会」の実現が不可欠であるとし、そのためには「働き方改革」が必要であるとされ、2016年8月3日安部第2次改造内閣が発足した際にそれまでの一億総活躍社会担当大臣の加藤勝信大臣を働き方改革担当とし、2016年9月26日 第1回働き方改革実現会議が開催されたのである。

それから働き方実現会議は今年3月第10回目を数え、3月28日実行計画が発表されたところだ。

基本的な考え方として示された内容は次の通りである。

 

・日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革。
働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い企業文化や風土も含めて変えようとするもの。働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする 。

・働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段。生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」が構築される。社会問題であるとともに経済問題。

・雇用情勢が好転している今こそ、政労使が3本の矢となって一体となって取り組んでいくことが必要。これにより、人々が人生を豊かに生きていく、中間層が厚みを増し、消費を押し上げ、より多くの方が心豊かな家庭を持てるようになる。

 

つまり「働き方改革」とは経済政策だった。皆が思っているように残業が減ったり休みが増えたりすれば賃金は減るに違いないので、なんでこれが経済政策になるのか働いてる方は訳が分からないに違いない。

もっと詳しく見てみよう。

この実現計画の中でアベノミクスの4年間はGDP名目成長率9%成長など大きな成果があったとしたうえで、個人消費や設備投資の伸びがみられないその原因には少子高齢化という人口問題、イノベーションの欠如による生産性向上の低迷があったとしている。またそれには日本の労働制度と働き方に課題があるとし、正規非正規の社員区別の撤廃、長時間労働の習慣の是正、単線型日本のキャリアパスの改革などが必要であるとした。

それの改善策として9つの検討テーマと19の対応策が提示されている。
ここで細かく書くと長くなるのでこのPDFを詳しくご覧いただきたい。
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf

つまり要するに、

「日本人、今のような働き方なんかしていたらば日本経済はだめですので変えましょう。」

ということなのだ。そして一億総活躍社会とは高齢者も障害者も子育て中の人も病気を抱える人もそして外国人もみんな働けと。そのためにあらゆる政策を実行しますよと。

これが働き方改革実行計画の中身だ。残業の削減もたしかにその一環だがほんの些末な問題かもしれん。電通過労死事件が大きく取り上げられたため、みんなちょっと違うところに注目しすぎかもしれない。

■世の中どうなっていくか。(○○年後の日本の働き方)

ここで2つのフィクションを書こうと思う。成功パターンと失敗パターンだ。

その1の成功パターンでは自分なりにこうなってほしいという話。

その2は今のまま行政や企業のスタンスがたいして変わらないのだとすれば・・という話だ。

 

■ その1・労働時間と子育て時間の両立 

A子さん(38)は小学校2年生と幼稚園の年長さんの2人のお子さんを育てながら地元の観光施設で働く母子家庭。

観光施設だから忙しいのは土日祝日となる。ゴールデンウイーク・お盆やお正月もそうだ。今日は14時から2年生の上の子のPTAがある。下の子は18時までにお迎えに行かなければならない。自分の時間など寝る時くらいで、全くないに等しい。

以前は、子育て中ということもあって、パートタイマーで月16日勤務にしてもらい、少ない時給を生活の糧に母子家庭の手当を頼りに細々と生きていかざるを得なかった。勤務日数が少ないと有給休暇の日数もそう多くなく、それも子供が熱を出した時のためなどにとっておきたい。子供と触れ合う時間を削りたくはなく、お弁当作り、縫物、学用品の買い物など子供のためにいろいろ準備しなければならない様々なこともあってなかなか、フルタイムで働くことは難しかった。

働き方改革が実行されてからはフルタイムで働くことができるようになった。
その理由は、「子の健全な育成ために必要な時間の確保に関する法律」が労働基準法に付け加わり施行されてからだ。
学校行事や地域活動など親子がともに参加しなければならない青少年育成が目的の学校や地域がおこなう行事参加にかかる時間についての休暇、外出について1日を限りとして賃金の支給が義務付けられたからだ。2日目からは手続きすることによって一日の平均賃金の3分の2が雇用保険から支給される。

これに伴って、学校や幼稚園・保育園・各種養護施設等は預かっている子の親が勤務する職場と連携を取って行事などのスケジュールを共有する仕組み(インターネット上の子育て支援グループウェア)が構築され全国で用いられるようになった。学校にも職場にも親の勤務スケジュールを調整する担当が配置され双方話し合ってアドバイスしてくれるから、以前と比べるとがぜん勤務がしやすくなった。

学校はそれぞれの親の勤務スケジュール上で、学校行事にどうしても参加できない、お迎えが遅れそうなどの情報がわかるし、その情報は勤務先も共有しているから、本人と事前に話をして適切にスケジュールの調整を行うことができるのだ。学校も職場も子育て中の親に譲歩して、行事のスケジュールを変更するなどできるだけ都合を考慮してもらえる。これだと学校も勤務先も共同で子育てに参加する形となる。

A子さんはフルタイム勤務に戻って以前より給与も上がり、安心して働けるようになった。政府の働き方改革に感謝しているという。

 

■ その2・企業だけに荷重がかかると・・

「俺なんか32時間ぶっとおしで働いたこともあったよ。昔は一日16時間は当たり前だった。今はやかましくなったなあ。」

などとどこの会社のおじさんもするような昔の過重労働自慢をするのは、××商事のB課長。

このごろはたいへんだ。この低成長時代、もう売り上げは上がらないっていうのにつぎつぎと課せられる仕事上の課題に加え、働き方改革の名のもとに、子育て・介護中の社員に対する配慮、高齢者の雇用、障害者の雇用、非正規社員の待遇改善、さらには時給を上げなきゃならない。

これ、国は法律を変えて企業に義務付けるだけであって、これら全部、B課長のような中間管理職がやらなきゃならないのだ。B課長が全部一人できめられるわけじゃないから上司や取締役との調整もしなくちゃならない。

だとしてももうこんなことには慣れている。知り合いの社労士に頼んで就業規則を変えて労働基準監督署に届け出ればいいのだ。これで一応国の政策には対応したことになる。部長にも、「対応完了いたしました!」と報告でき、それ以上は追及されることはない。

でもこんなことに忙殺されている間に雑務はたまる。雑務=面倒な仕事。これは若い新入社員のC君にさせる。C君はまじめで一生懸命だ。だからどんどんまわす。B課長は効率よくやれよと声をかけるだけで、あとはそのまま。

しばらくするとC君、会社を無断欠勤するようになった。後から気が付いたのだがC君の月の残業時間は100時間を超えていた。無断欠勤だと人事課で問題になる。
取締役会でB課長のやってきた仕事が問題にされたのは言うまでもない・・・。

結局XX商事からはその後も何回も労務上の問題が出て、労基署の調査が入り、法律に沿ってきちんと就業規則が改正されていたにもかかわらず、全く実態は昔のままであったことがばれた。B課長の同期の課長はこういう。

「働き方改革っていって、国は結局全部企業に押し付けるんですよね。うまくいかなきゃ中間管理職のせいにされるんですよね。」

 

■ 時代に即応しないといけないのは企業だけじゃない。

高齢者の雇用、障害者の雇用を企業に求めるのは社会保障費の削減にもつながる政策である。しかしその具体策はみんなで考えないと国や自治体が何か考えてくれるわけではない。
はっきり言って普通の会社はこのままでは、高齢者や障害者を雇用できる状態じゃない。

国の政策を実行する主体のサラリーマンは、会社のために働いてるのであって公務員じゃないから会社の利益を優先するし、自分の保身はもっと優先するだろう。

だから国の政策に協力的な労務上の施策をとった企業には何かインセンティブを与えるべきである。今は義務付けて、労働局が「報告の徴収」などといって見に来るだけだ。

働き方改革、皆さんその趣旨を理解してまじめに取り組んだ方がいいと思うが、妙ないいまわし上のレトリックに騙されないで声を上げるべきときは声を上げよう。

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