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病院で最期を迎えるということ ~藤掛第一病院事件にみる変化する死生観~

投稿日:2018年9月1日 更新日:

8月の26日から28日にかけて岐阜市の「Y&M 藤掛第一病院」の83歳から85歳の入院患者が相次いで5人死亡した。おりしもこの病院ではエアコンが故障中で、死亡した入院患者がエアコンの利かない部屋の患者だったことから、熱中症の疑いがかけられ、県警が殺人容疑で病院を家宅捜索する事態になっている。

この事件で、藤掛第一病院は集中砲火の的となっており、今後の対応が注目されているところであるが、院長がインタビューに出てきて堂々と「病院の対応に問題はなかった」と言い切ってしまったところからこの問題は大きくなった。

この院長の答え方からは、少なくともこの病院では、入院患者の死に対して「こういう認識」でいたということがうかがえる。

「こういう認識」とは、「入院患者が何かのきっかけで亡くなることは、普通のことです」という認識だ。

このままだと暑くて死ぬおそれがあるのにあえて必要な措置を取らなかったのなら犯罪だ。

ただ、今回は病院内で人が亡くなると言うことにもいろいろな事情があることをプラスして考えてみたい。

この藤掛第一病院は医療療養病床119床(出典:日本医師会 地域医療情報システム)のみということで、何らかの理由で在宅や施設に入所できないでいる患者さんや、もともと終末期にある患者さんが多いため、病院内で人が亡くなることは特別なことではなかったのではなかろうか。警察に届け出ていなかったことについて、厳しい論調で指摘する新聞もあったが、日本全国、病院は入院患者が亡くなったことについて事件性の認識がなければ届けないのが普通であろう。

ご高齢で、もう回復する見込みはないのだが、病院で何らかの処置を行えば生きながらえる容態の患者さんがいる。自分で飲食ができない人にチューブで胃に直接流動食を送る胃瘻、自発呼吸ができない人に人工呼吸器。人口透析。こうした患者さんは処置をやめれば亡くなる。・・・自然な死とはいったい何なのだろう。こういう疑問を持つ暇もないほどの日常が医療療養病床で行われているのだが、果たしてこれはどう見るべきなのか。

現代の日本では、人の死に場所は「病院」ということになっていて、これが普通であるという事実がまずある。

自宅では看られない、施設にも入所できない。年齢からみて回復の見込みもない病気を抱えた行き場のない人。医療療養病床は全国に27万7千床ある。

救急車を受け入れているような、急性期病院の診療報酬からするとずいぶんと安い報酬で、こうした患者を長期間受け入れる医療療養病床に対する国や世間の目は冷たいように思う。3年に一回医療費が削減されるたびにいつもターゲットになってきた経緯もある。

件の藤掛第一病院も個人病院ながらその一端を担っていた。迅速にエアコン故障の対応を取らなかった、あるいは対応が適切ではなかったことに対しての断罪が免れないのは否めないが、ひょっとして27万7千床もあれば全国ほかの地域でも、このようなことは起こっているのではないのか。

今回のこのような事態、ほかの病院も紙一重ではないかと疑ってしまうのであるがどうだろう。

今、国では、人が最期を迎える時について「看取り」をなるべく自宅でするよう政策を進めている。在宅看護、介護事業者は看取りに対する医療保険・介護保険報酬の加算が設定されている。在宅看護介護業者は加算を取る方向で体制を整えるから、これから在宅での「看取り」の取り組みが一層進むだろう。「病院で死ぬな」ということだ。入院すると金がかかるから。

社会保障費の削減とともに人々の死生観も変わっていきつつある。

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