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雇用政策のやる気のなさ、ここに極まる。 ~障害者法定雇用率水増し問題と働き方改革~

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中央省庁や地方自治体による障害者雇用率の水増しが発覚し、経済界を中心に怒りの声が広がった。普通に働くサラリーマンには身近に感じられない問題であるが故、大きな炎上等の流れにはつながっていないようだが、このブログはただで済ますつもりがないよ。

障害者の社会参加促進に寄与するという社会的使命。それを理解して、障害者を何とか雇用しようと、また年々ハードルが上がる法定雇用率をクリアすべく必死の努力をしても、どうしても雇用できずに障害者雇用納付金(不足人数一人当たり月に4万円)を納めざるを得ない会社は多い。

一人当たり月4万円である。年に1回だから、法定雇用率を満たしていない期間が12カ月あったとすれば、足りない人数1人当たり48万円もの納付金を支払わないといけない。2人足りなければ96万円。ちょっと前までならひと月5万円だったからまだひどかった。

それを毎年払ってたのだ。普通の企業は。

これだけ利益を出すのにどれだけ努力が必要だったことか。

いったいこれは何の罰金だったのか。

そうかよそうかよ。糖尿病とか長期休業者を入れればよかったんだよねえ。「独立行政法人高齢障害求職者雇用支援機構」様からキビシイ指導を受けているから障害者手帳、療育手帳等を持たない人以外をカウントしてはならないことくらい常識として知っているからそんなこと思いつきもしなかったわ。

コピーも提出していたしな。何回も研修に呼び出されてるからできないことくらい、よおく知ってたわ。

「これまで納付した金、全部返せ!」

これ位言いたい話なんである。

各企業の人事担当者の皆様も、法定雇用率満たせなければ毎年苦心惨憺したあげく納付金を払い、上からは怒られ、自らの評価も下がり、いいことは何もなかったと思っている方も多いのではないか。もっと怒ろうぜ。

まずは、大元の「独立行政法人高齢障害求職者雇用支援機構」はどうなのか、厚生労働省はどうなのか、各県の労働局はどういう状況なのか、まだ発表してないから、してほしいと思う。どうせ厚生労働省の天下りがバカ高い報酬もらってふんぞり返ってるんだろうがな。

まあ、「生産性がないから」感情に任せた罵声浴びせはこのくらいにしといてやる。

さて、鬼尾宗慶の分析はここからだ。まず、この度の事件は障害者の雇用政策がこのままではだめだということをはっきりと示唆している。だって誰も計画通り実行できてないではないか。改めるべきだ。一億総活躍社会、地域共生社会を目指している国がとる政策にしてはお粗末極まる。やる気がないのではないか。真面目に考えてない証拠だ。

ではどのように改めるべきなのか。

日本人の考え方の癖の悪いところとして、困難なこと、嫌なこと、だれもやりたがらないことを、当番制など、義務化して、なんでも「苦役」にしてしまい、それを耐え忍んで美徳とするとか、居酒屋で愚痴を言って終わらせるみたいなところが多く、肝心の改善を忘れて問題が解決しないことが多いではないだろうか。考え方の形、癖があるのだね。

そもそもこれは働き方改革の問題と発生源が同じなのではと思うのである。
これまでのように「個人」を「働き方」に合わせて検討すると、「できない」が多くなる。

一見仕事をするのに特段何の不都合もなさそうな人が、ある一つの疾患があるだけのためにいつまでも就職できないでいる例が数多くある。その人に適合する仕事を探そうとすると、「ない」からそうなってしまうのである。仕事内容はよくても、設備がない、長時間できない、時間が合わない、通勤手段がない、などの理由。

よく考えてみると育児休暇を取っている人であってもその間働けないというのはこういった事情と同じである。

ここは「個人」を「働き方」に合わせるんではなくて、「働き方」を「個人」に合わせるべきではなかろうかと思う。

個人個人できることは違うのであって、それぞれを生かし切ってこそ、生産性は上がるはず。企業もその点を考え直して、個人個人の能力が生かせるような形に仕事を組みなおして、「個人に合った働き方をたくさん用意」してあげないといけないのではないか。

そっちの方の促進こそがこの政策の本筋であり、ただ障害者法定雇用率という数値目標だけのために全くおかしな苦役を延々と行うバカなことは、もうやめてほしいと思うのだが、いかがだろうか。

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