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「搾取」の論理が忘れられていないか。~入管法改正案成立とフランスのデモ~

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 なんやかんやで忙しく、9月22日の更新を最後にさぼっていたが、このブログのPV数は、たいして落ちていないから不思議だ。

 これからも、この生きにくい世の中を、命ある限り生きていくための考え方をどうすればよいか、読者の皆様と一緒に考えていきたい。

さて、

外国人労働者の受け入れ拡大を目的とした「出入国管理法改正案」が参議院本会議で強行採決されたのが、12月8日。
 国会がもめていたそのころ一方、フランスでは燃料税増税反対を叫ぶ市民がデモをして一部が暴徒化して、死亡者、けが人、略奪、車がひっくり返されるなどの事態が発生。非常事態宣言寸前の大変なことになってしまっている。

これら2つの一見つながらない事件には、共通するキーワードがあると思う。

それは「階級社会」である。

 外国人労働者を受け入れるということは、いろんな理由で反対が多い。

・賃金の上昇を抑制する
・外国人労働者の人権が損なわれている状況がある
・社会不安、治安悪化の可能性がある

 現状の、技能実習生制度は本来の目的を離れて悪用されているのは誰の目にも明らかだった。つまり、言い方は悪いが「貨幣価値の高い日本の賃金をもとめ、借金などいろんなリスクを負って働きにやってくる外国人を低賃金でこき使う」のに使われているというのだ。

ちなみに、技能実習生の労務管理についての各種法令の正しい理解についてのパンフレットはこちら。

このパンフの内容は、建前もいいところで、現状とはずいぶんギャップがある。
このパンフレット通りに実践している企業がどれくらいあるかということと、
外国人自体も技能実習生としてではなく、単純にお金を稼ぐために日本に働きに来ているという現実がある。

 決して国がこのようなやり方を奨励しているわけではないことはわかるが、今の状態では実質「見て見ぬふり」をしているとのそしりを免れないだろう。
 
 鶏の解体、魚の加工など、建設作業員など、血まみれ泥まみれになって長時間働くような、日本の若者が誰も希望しないであろう職種でこうした取り扱いは多いという。

 経営者は、低賃金でよく働く労働者を求める。その方がよりたくさん利益を残せるからだ。このブログでもたびたび書いているように、今後の日本は労働力が絶対的に不足する。だからその準備っていうのもわかる。

 日本の経営者、いや日本人や日本政府の考えていることってこうではないか。

日本人が誰もやりたがらないし、足りなくなる業種に外国人をあてがえば、日本人自体はもっと賃金の高い職種に就くことができる。なおかつ経営者は人件費を安くできて助かる。外国人労働者にも、年金保険料、健康保険料、所得税、消費税負担させる。税収は増える。社会保障費の破綻問題も幾分和らぐ。

いいではないか。いいではないか。

だが、そううまくいくのかっていう話だ。文化の違いによるコミュニケーション不全、いじめ、差別、必ず起きる。犯罪も必ずある。反社会的集団みたいなのものも出来上がるだろう。外国人労働者の多くは少ない賃金を海外に送金するだろうから、労働人口は増えても国内消費の拡大は少ないかもしれない。

貨幣価値の低い国から来た外国人から搾取しようとしている日本人の考えはみえみえであって、それら問題にきれいごとで対処できるのだろうか。安倍政権も、野党も、そうしたことに答えは出ていないまま、法案はすでに成立した。

これを「移民法」と呼ぶ筋もあるが、筆者に言わせれば、

「外国人労働者搾取法」

というのが正しい。

少子高齢化で、年齢別人口のバランスが崩れていく未来が示され、日本の若者は搾取されている実態を実感し始めている。
その注意をそらさねければならない。こうした必要性にもこの法案は重要なのだろう。

そうだ。
外国人労働者を入れて、階級社会をつくるのだ。
貧困層の固定化は進み、不満は鬱積して歴史が示している通り、やがて何らかの形で階級闘争が始まるだろう。これから人口が少なくなっていく日本はこの危機をどう乗り越えるのか。

いっぽう、フランスではすでにそうした闘争は珍しくないのだそうだ。
今回の「黄色いベスト運動」程度のことは10年に1回は発生してきたらしい。庶民の直接行動が政治に大きな影響を及ぼすのは、これまでもフランスの歴史で行われてきたことであり、フランス人も庶民の怒りを伝える手段として心得ているのだろう。

 フランスは、EU加盟以来、庶民のための経済政策をとれなくなった。欧州連合の成立と安定的存続が庶民生活に優先する世界なのだ。今回はその不満が爆発した形となった。また、イギリスのように国民投票で離脱を決めながらも揺れ続ける国もある。
 マクロン大統領は一時的に燃料税増税を延期するなどの懐柔策を取らざるを得なかったが、こんなことでは収まらないに違いない。

 世界標準だの、グローバリズムだのどこから来てる掛け声なんだか。

きっと騙されているのだ。

 こんなことを考えていると、まるで現代は階級闘争が繰り返された100年前に戻っていくかのような暗澹とした気分になる。そこで、ちょうど今から100年前に書かれた与謝野晶子の「階級闘争の彼方へ」という文章の中からの一文を引用させていただいく。

しかし私は予言します。資本階級も労働階級も、人生の真の平和が愛と正義と平等と自由との中にあることを深省する日が来るなら、資本家はその営利的利己心と、階級的特権と、不労遊惰(ゆうだ)の悪習とを抛(なげう)って、その全財産を社会の共有に委すると共に、一般の文化的労作者の間に没入し、労働者もまた資本家に盲従する奴隷心と、乃至(ないし)資本家に取って代ろうとする利己的支配的欲望とを一擲(いってき)して、同じく文化的労作者としての一席に就くことを、いずれも自発的に決行するに到るでしょう。資本と労働の協調問題は、こういう風に文化主義の理想を目標として考察しなければ、要するに徹底した解決を発見しがたかろうと思います。(一九二〇年一月)

 敗戦の廃墟から立ち上がって高度成長期を経た日本は、社会政策も一応の成果を見せ「一億総中流」などと言われ、長らく階級闘争とは無縁の世界だった。階級闘争は過去の遺物。冷戦も終わってマルクス主義は誤りだったのであり、死んだ理論のように言われた。与謝野晶子が予言したように資本と労働は協調し終えたように思われた。

だが、グローバリズムに飲み込まれた社会は、全世界のたった1%の資本家の目論見通りとなり、再び階級社会に陥りつつある。

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