■ 早朝、ミサイルに起こされた。
8月29日早朝、北朝鮮がミサイルを発射した。テレビを見ていたらいきなりJアラートの画面がでてきたのでびっくりした人も多いと思う。
防衛省の発表によるとミサイルは午前5時58分頃、北朝鮮西岸のスナンから1発、北東方向に発射された模様とのこと。詳細については現在分析中。(8月29日現在)発射された弾道ミサイルは、午前6時05分頃から07分頃にかけて北海道渡島半島及び襟裳岬の上空を太平洋に向けて通過し、その後、午前6時12分頃、襟裳岬の東約1180kmの太平洋(我が国の排他的経済水域(EEZ)外)に落下したものと推定されるとのこと。また、飛翔距離約2,700km、最高高度約550kmであったと推定されるとのことである。
その後同日午前11時40分ごろに行われた記者会見で小野寺防衛大臣は、海上・陸上自衛隊機による調査が行われたが日本海・本土陸上・太平洋排他的経済水域においても被害は確認できていないとの発表をした。
■ これについてのネット上の意見を冷静にみる。
例によって、ソーシャルメディアには各ネットニュースメディアをはじめとする投稿が相次いでいる。これらに対する一般コメントは圧倒的に北朝鮮を非難するものが多いのは当然として、Jアラートの運用等あり方に関して疑問を呈するもの、左派の意見として安倍政権のマスコミを使った印象操作だと非難するものさまざまだった。
これら議論をいくつか取り上げて考察してみたい。
■ Jアラートについて
「Jアラート」というのは通称で正式には「全国瞬時警報システム」という仕組みの名称である。消防庁から人工衛星や有線で対象の自治体、携帯電話会社へ情報が流れ、自治体の運用する防災無線、携帯電話会社の電波に乗せて携帯電話等に一斉に知らせる仕組み。地震・台風・津波などの自然災害に関する情報は気象庁で、ミサイル発射、航空攻撃テロ等の有事関連情報は内閣官房で作成され消防庁から発信される。
今回のミサイル発射でJアラートによる警報が発令されたのはミサイル発射の4分後だった。このときミサイルはすでに日本の上空にかなり接近していたものと推定され一部の人には「遅いのではないか」との疑念も持たれたことから様々な議論が沸騰した。
■ 否定的な見方
「どうせ落ちないだろう」との大方の予測から、けたたましい警報音で早く起こされたことに対する「クソ」発言で堀江貴文氏のツイートも話題になった。電車など公共交通機関もストップするなどの騒ぎで迷惑をこうむった人も多く、総じて「Jアラートって意味ないんじゃないのか」的な感じの意見が多く流れている。このように国民にメリットを感じさせない警報システムの発報、何も被害がないのに大げさな報道が多くの人には不自然に映り、憲法を改正したい安倍政権のプロパガンダである説、国家陰謀説などが数多く流れた。
さらにあとから、韓国・中央日報によると米国の人工衛星により前日の28日、IRBM(中距離弾道ミサイル)を発射しようとする兆候を察知し韓国当局に知らせていたことが判明。「それならば事前にわかっていたはず」といわれ、その疑念はますます深まっている。
■ 肯定的な見方
「警報さえあればいざというとき身構えるだけでも被害は軽減できる。」「まったく何もないというのは何もできないから被害を大きくする」「ミサイルが落ちるかもしれないのは本当なのだから,かねてから訓練しておくべき」などの意見。そもそも「国民の生命を保護するためのシステムが正常に作動したのだから非難される理由など何もない。こんなのに文句を言うやつは○○○だ」、「平和ボケ、お花畑はほっとけ」云々。要するに日本の安全保障に対する重大な脅威なんだから、そもそも警報を非難すること自体がおかしいじゃないかという論調は多い。まあ、一番多いのは左派攻撃のための論調だ。
■ 北朝鮮のミサイルに対する安全保障
また、「迎撃せよ」との声も多かった。前にこのブログでも書いたが、自衛隊ではイージス艦から発射のSM-3、陸上から発射されるPAC-3の2段構えで迎撃する体制を整えており2002年から2015年までに40回の発射実験をし、成功率82%だったという。これがこのままあてにできるというのであれば、10発撃たれたら8発まで大丈夫ということになる。逆に言うと北朝鮮は日本をねらって打てば10回中2発は落ちますよということだ。さらに6隻のイージス艦で日本全土を24時間365日カバーすることは困難。船はメンテナンスや乗組員の休養・補給で港へ帰る必要がある上、防空や対潜警戒などの任務もあり、レーダー能力をフルに使わねばならない弾道ミサイル防衛に専念できないという。
これではまだまだ不十分と考えられるため、ミサイル発射直後の記者会見で小野寺防衛大臣は次のように述べている。
私どもとしては、イージス艦の更なる増強、これは計画的に進めておりますが、やはり万全を期す意味で※1イージス・アショアを中心とした新たなアセットについて、平成30年度の概算要求の中で盛り込んでいきたいと考えております。
日本国内に向けられていなかったことから、迎撃の必要性はないと判断し、迎撃しなかったということであるが、今回の発射に対し迎撃したとしても、十分な警戒態勢があったとはいえず当たらない可能性もあったということであり、国民の生命財産を守るため「万全を期す」必要があることは論をまたない。
■ 陰謀説を検証する
SNSでは今回の、Jアラート発報から始まる一連の騒動が安倍政権の陰謀・世論操作であるかのようなツイートや投稿が散見された。幼稚な誤解に基づくものも多いのだが、いくつか気になる点を挙げてみる。
今回のような騒動で得をするのは誰かというのが気になる。事件が起これば、それによって得をする者が疑われる。日本がアメリカから武器を買えば儲かるのがアメリカの軍産複合体。
日本ではイージス・アショアの導入費をこれから来年度の予算に要求されようとしているところであるが、反対する者もいるので賛成意見を増やさねばならない。此度の一連の騒ぎはこうした「流れ」「空気」を醸成するために米軍産複合体に操られた日本政府によって仕掛けられたものだ。というわかりやすい見方。もっともな話だ。
でもこの流れ今までもあったしロッキード事件からすっと同じ事やってなかったか?。善悪はともかく、もうすっかり経済を動かす一つのスイッチになっているのであって反対したりやめさせたりできないだろう。誰かの陰謀云々ではなくすでに世界的社会システムなのだ。陰謀説を唱えたところで緊張状態が続けば経済は活性化するからしょうがない。それで生計を立ててる人がたくさんいるのである。肯定はしないけど現実だからしょうがない。
でもほんとに戦争になったら誰かが儲かる誰かが損するという話どころではなくなる。日本のネット上で「儲けたい人の陰謀が云々」「北朝鮮の脅威に備えて云々」などとこんな平和な論争をしているうちに、裏でどんなことが行われているのやら・・・。
■ 誰も問題にしてないが怪しいと思う現象
北朝鮮ミサイル発射のわずか8日前、横須賀を母港とする米第7艦隊のイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」が、シンガポール沖のマラッカ海峡で石油タンカーと衝突、乗組員5人が負傷、10人が行方不明となる事故があった。
そのわずか3か月足らず前の6月1日、同じ艦隊に所属しているイージス駆逐艦「フィッツジェラルド」が伊豆半島沖でフィリピン船籍コンテナ船と衝突、乗組員7人が死亡、極めて大きな損傷を受けたばかりだった。
両艦とも修理に相当な時間がかかるため使用不能になっている。なお、第7艦隊ジョセフ・アーコイン司令官は23日、解任されている。
実はこの2隻、第7艦隊第15駆逐隊に所属する7隻のアークバレイ級ミサイル駆逐艦のうちの2隻だった。第15駆逐隊の7隻のイージス艦のうち4隻はBMD駆逐艦といって所属の第5空母打撃群から離れ、北朝鮮から発射されるような弾道ミサイル防衛を担っている。そのBMD駆逐艦4隻のうちの2隻が、2か月の間に相次いで事故に遭い使用不能になっていたのだ。
これは29日、北朝鮮がミサイルを発射する直前に日本周辺の米軍による弾道ミサイル防衛能力が半分にそがれていたことになる。少し「できすぎた」話ではないか。
■ まさかのサイバーテロの可能性
船の航行にとってGPSは欠かせないが、今回は何者かのサイバーテロによってGPSから意図的に誤った情報が流されていた可能性がある。下記の記事をご覧いただきたい。
衛星ナビゲーション・システムのエキースパトでテキサス大学のハンフリーズ教授も、海軍艦船衝突が起きる確率からみても、4件の事故が起きることに疑問を示している。
ハンフリーズ教授によると、6月に黒海でGPS通信の操作で、航海中の船20隻のナビゲーション・システムが正常で作動していたにも関わらず、別の位置に誘導されていた事件があった。「スプーフィング」と呼ばれる技術が使われた疑いが高い。「スプーフィング」は偽の情報を送り込んで管制用のコンピューターを制御する。衛星からの信号よりも強い信号を使ってGPSシステムに侵入、コンピューターに誤った命令を送って船を操った可能性がある。ハンフリーズ教授は「GPSスプーフィング」技術を使われたサイバー攻撃の可能性もあるとしている。
引用元:グローバルリスクコミュニケーションtrendswatcher
「米海軍艦船衝突事故にサイバー攻撃の疑い」
22.08.2017
GPSの座標値を書き換えて偽の現在座標値を船のコンピュータに送れば、GPSだけが頼りの船は現在地を完全に見誤ることとなる。交通の込み合っている海峡などの中では数十メートルのずれが衝突の危険性を招くだろう。最新鋭のミサイル防衛用イージス艦を役立たずにするのにミサイルも軍艦もいらないらしい。なんとも恐ろしい話だ。
■ 本当のことなんてわからない。
前にこのブログでも書いたが、この話で締めざるを得ない。
戦争がらみの情報など全部ホントかどうかわからない。
われわれは、いろんな可能性を推察しことの推移を見守るしかないのではないか。
※1 イージス・アショア
イージス・アショアはイージス艦と同じ仕組みのシステムを陸上に展開しようというものである。現在日本はイージス艦を6隻保有しているが、対潜水艦・防空任務などの他の仕事もあったり、船であるが故乗組員の休養や定期的に母港に戻ってメンテナンスが必要であったりするため、6隻すべてを日本周辺に配置し常時ミサイル防衛に当たらせるといったような運用は困難であるということもあった。イージス・アショアは日本の本土内2~3か所に設置すれば日本全土をカバーできる。1機700億~800億円
ちなみに導入が予定されている垂直離着陸輸送機オスプレイの価格が1機100億円、エンジンなどの予備部品も含めると200億円だそう。
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